レコードの歴史
レコードの歴史をたどってみる
レコードの歴史をまとめてみました。ここでは、できるだけ時系列的に並べてみましたので、時代とともにどう変化してきたのかがわかると思います。ある意味、20世紀の音楽の歴史そのものであり、現代にもつながっています。音楽ほど時代を越えて受け継がれてきたものは少なく、レコードどころか、その後継となったMDやCDですら過去の存在となりつつあるだけに、今あらためて蓄音機やレコードの歴史を見直したいと思います。そう思って読んでもらえればと思います。
レコードの原点 ― 1870年代の発明
1870年、19歳でドイツからアメリカに移民してきたエミール・ベルリーナーは、3年間、さまざまな職を転々とした後、発明家を志します。彼は、電話機についての発明を評価した研究所に注目し、自らも音に関する研究を始めました。やがて、音を記録する装置の改良を重ね、彼はこの発明をベル研究所に売り込みます。
ベルリーナーは、亜鉛盤を薄い脂肪性フィルムで覆い、そこに音を刻み、さらにそれを酸につけて腐食させることで音を再現する方法を考案します。これにより、亜鉛の原板を保存しておけば、何枚でも複製を作ることが可能となりました。これは、従来の円筒型録音に対して「複製ができる」という大きなアドバンテージでした。
円盤レコードの誕生 ― グラモフォンの時代へ
1888年、ベルリーナーはこの方法を実用化し、同年フィラデルフィアのフランクリン協会会員を前に「グラモフォン」の実演会を開催します。円筒型を使用したエジソンのフォノグラフとは異なり、ベルリーナーは円盤(ディスク)を採用しました。この新製品に円筒を使ったフォノグラフと区別するための新しい名前として、「グラモフォン」という名称を冠します。
このグラモフォンの特徴は、よりクリアな音を刻み、再生できるという点でした。こうしたアドバンテージにより、音楽産業は一気に拡大していきます。ベルリーナーはこの発明を特許として申請し、やがてレコード産業の基盤を築くことになります。
技術革新と音楽文化の発展
19世紀から20世紀にかけてのレコードの発展は、録音技術の進歩と密接に関係していました。電気録音の技術が開発され、ステレオ録音が可能になると、音質は飛躍的に向上します。
この技術革新は、同時に大衆音楽の変化とも連動していました。アメリカではジャズが主役となり、その時々の時代の空気を反映したヒット曲が次々と生まれていきます。音楽のジャンルの変化に合わせて、録音技術やレコードの形も進化していきました。
こうした流れの中で、20世紀の間は「よりクリアな音」を求める技術の進化が続き、レコードは長く音楽文化の中心的存在であり続けました。レコードの歴史を振り返ることは、すなわち音楽の歴史をたどることでもあります。
レコードが語り継ぐもの
レコードの歴史は、単なる記録媒体の進化ではなく、音楽と人との関わりの記録でもあります。
その都度、技術やソフトの進化に合わせたヒット曲が生まれ、大衆文化を形づくってきました。
そう考えると、レコードの歴史を知ることは、時代ごとの人々の感性や暮らしを知ることでもあります。
今ではデジタル音源が主流となりましたが、針を落とした瞬間に流れる温かみのある音は、現代にもなお多くの人の心を惹きつけています。レコードは、まさに20世紀を代表する「音の記録」であり、音楽史における不朽の存在といえるでしょう。
